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「自分のルーツを知ってほしい」アメリカから故郷・滋賀へ。半年間の教育移住で得られた家族の変化

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アメリカ人のご主人と、国際結婚をした佳奈・スミスさん。アメリカにお住まいのスミスさんご家族が選んだ教育移住先は、故郷の滋賀県でした。

毎年帰省で訪れている場所だったため、スミスさんとお子さんたちは大きな不安なく移住生活をスタート。一方、アメリカで生まれ育ったご主人にとっては、慣れない環境での暮らしや仕事で大変なこともありました。そして、当初2~3年を予定していた移住生活は、思いがけず半年で終わりを迎えることに。

ご家族揃っての移住に向けて準備をしたこと、半年の移住生活の中で見られたお子さんの変化、そして帰国後も続いている日本とのつながりについて、 詳しくお話を伺いました。

塾選ジャーナル編集部

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目次

【保護者プロフィール】

お名前 佳奈・スミス(仮名)
年齢 36歳
移住前の居住地 アメリカ合衆国カリフォルニア州
家族構成 5人家族(父・母・長女・次女・長男)

【移住の概要】

移住先 滋賀県
移住時期 2023年12月
移住形態 家族移住
子どもの年齢(移住当時) 5歳・2歳・0歳(移住先で出産)
学校 地元のこども園
学費 自己負担なし(用品代等は別途負担)
準備期間 春頃~12月(約半年~9か月)
移住期間 約半年

「自分のルーツである日本を知ってほしい」──母の故郷・滋賀への移住

―はじめに、教育移住を考え始めたきっかけを教えてください。

かねてから、私が生まれ育った滋賀で、数年だけでも暮らす経験をさせたいと思っていました。私が日本出身、夫がアメリカ出身と、子どもたちには二つの国のルーツがあります。今住んでいるアメリカだけではなく、ルーツのひとつである日本のことも知ってもらいたかったんです。

そして、語学の習得も大きな理由です。せっかく日本とアメリカのルーツがあるので、将来進路を考えたときに、「アメリカだけではなく、日本も選択肢にできるといいね」と夫と話していました。そのうえで、語学の習得は欠かせないと考えていました。

―このタイミングを選んだのはどうしてですか?

移住を本格的に考えたのは、2023年の春頃。3人目である長男の妊娠が分かったときでした。そして、長女は5歳、次女は2歳。小学校に入っていないうちが移住しやすいと考え、里帰り出産もかねて「このタイミングでしよう!」と思ったんです。

環境や学習への柔軟性がある幼少期のうちに、いろいろな体験をしてほしいという思いもありました。

―移住前、お子さんの日本語のレベルはどのぐらいでしたか?

長女も次女も、日本語を聞いて理解はしているものの、長女が少し日本語での返答ができるくらいでした。アメリカでの生活では、日本語を話すのは私だけ。会話のほとんどが英語の生活なので、どれだけ頑張っても、なかなか日本語は出ませんでした。

移住までに少しでも日本語を話せるようになればと、移住が決まってからは、テレビの音声を日本語に切り替えたり、本を読んだりしました。できるだけ積極的に日本語を使いましたが、あまり押し付けず、ストレスにならない程度に留めました。

日本語を嫌いになってもらいたくなくて。なかなか日本語での会話のリズムには乗れませんでしたが、単語や歌は以前よりも出るようになりました。

ちなみに、年に1度私の実家に家族で帰省するのですが、日本で過ごしている間は、日本語が出やすいんですよね。滞在としては1~2か月なのですが、環境が変わるだけでこんなにも違うのかと、毎回驚かされました。

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母の地元の滋賀でのびのび過ごす子どもたち。

―教育移住をとおして、お子さんたちにどんなことを感じてもらいたいと考えていましたか?

個人的に、日本とアメリカの保育は、それぞれフォーカスしているところが違うと感じています。日本の保育は「みんなグループの一員だよ」と教えますが、アメリカは「みんなと一緒じゃなくていい」「個々のペースでやればいい」と「個を尊重する考え方」です。

もし、アメリカで育った子が急に日本に行って、みんなと違ったことをすると「何してるの?」ってなりますよね。だから、「集団の一員になること」を日本で学んでほしいと思いました。

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家の購入や家族の協力──先を見据えた移住準備

―教育移住について、ご家族に話されたときの反応はいかがでしたか?

夫もいつか教育移住をしたいと同じ思いがあったので、すんなりと話が進みました。子どもたちも「滋賀のおじいちゃん、おばあちゃんに会いに行こうね」という感じで。

まったく知らない土地への移住ではなかったので、移住してからも、子どもたちの様子はいつもの帰省のときと変わらなかったです。

―移住にあたって、お仕事の調整はどのようにされましたか?

夫は、もともと家でリモートワークをしていました。また、これまでも帰省の際は、口頭で数か月の海外勤務の許可をとっていました。教育移住は2~3年ほどを考えていましたが、今回も同じ形で確認したところ、OKをもらったんです。

でも、移住して早々に、この許可の取り方に後悔することになります……。

―そのほかの準備はどのように進めましたか?

夫のビザは移住前に私が手続きをしました。夫は日本語が話せないので、そのほかの手続きもほとんど私一人で対応しましたが、実家の家族にも協力してもらいました。

移住前の初夏に、一度実家に帰省したんです。そのときに地元の産婦人科で健診を受け、「妊娠〇〇週目ぐらいに帰ってきます」と病院と相談ができたので、産院についてはスムーズに準備できました。

こども園は移住したらすぐに登園できるように、手続きを母と妹にお願いして。家は帰省中に物件を見て回って、中古住宅を購入しました。

―もともと2~3年の期間限定移住を考えていらっしゃったとのことですが、賃貸という選択はなかったんですか?

はい。帰国して自分たちが住んでいない間は、バケーションレンタルという、旅行者の宿泊場所として活用してもらえたら、と考えていました。あと毎年帰省していたので、滋賀にも自分たちが帰る場所を確保したかったんです。

―中古物件はリフォームもされたんですよね。

はい。移住後、妊娠後期の大きなお腹で何店舗も工務店さんを回って、リフォームの相談をしました。それがすごい大変で……。後半は「住めるようになれば、何でもいいです」という感じでした。

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購入しリフォームした、日本の自宅の一室。

移住したのが12月、翌年2月に出産した後にリフォームが完了しました。新居で暮らせるようになるまでは、実家で生活させてもらいました。

―こども園はどのような基準で決められたのでしょうか?

移住直後は実家から、リフォームが完了したら新居からの登園となるので、実家と新居のちょうど間の距離にあるこども園を選びました。私の妹の子がそのこども園に通っていたというのも理由のひとつです。

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家族で楽しんだ滋賀暮らし――想定外の帰国までに起きたこと

―こども園に入園して、お子さんの様子はいかがでしたか?

長女だけがこども園に通いましたが、人見知りすることもなく楽しんでいました。もともと好奇心旺盛で、すぐにお友だちができる性格なんです。こども園バスにも乗ることもできて、とても嬉しそうでした。

毎年の帰省の延長線のような形なので、私自身もそこまで不安はありませんでした。子どもたちものびのびしていました。

―こども園でのコミュニケーションも、問題なかったのでしょうか?

英語で話すことがまだ多い時期でしたが、先生方も汲み取ってくださったので、大丈夫そうでした。英語で話すと「こういうことかな?」と考えながらコミュニケーションをとってくださいました。児童数の多いこども園でしたが、寄り添っていただき、本当にありがたかったです。

―ご主人にとっては異文化の中を長期間暮らすことになりましたが、様子はいかがでしたか?

やっぱり、慣れていない土地で窮屈に感じているところはありました。仕事でも、アメリカの職場の人たちと深夜や早朝にWEBミーティングをしていたので、大変だったと思います。でも、夫なりにストレスの発散方法も見つけて。家の周りは自然が豊かな場所だったので、ランニングをしてリフレッシュしていましたね。

また、こども園のお迎えにも積極的に行ってくれていました。もともと専業主夫になりたいぐらい子どもたちのことが大好きで、家事も育児も率先してくれる人なんです。夫と子どもたちが離れる選択肢はなかったので、大変な思いもさせてしまいましたが、私たちにとっては家族揃っての移住がベストでした。

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日本の自宅の庭でパパとシャボン玉で遊ぶ長女。

―費用面について伺います。生活費や教育費でアメリカとの違いを感じましたか?

円安だったので、とても助かりました。また、物価もまったく違います。

たとえば、日本だとラーメン一杯1,000円以下だと思いますが、アメリカだと2,000円を超えます。だから日本にいる間は嬉しくて、たくさん外食をしました。子どもたちは回転ずしが大好きなので、よく行きましたね。

保育料については市の制度の対象となり、自己負担はありませんでした。体操服やカラー帽子、お道具箱など、園生活に必要な用品は自分で買いそろえましたね。

アメリカで子どもを預けると保育料がとても高いので、そこが大きな違いです。

―滋賀での移住生活で、費用がかかったと感じることはありましたか?

リフォーム費用が想定よりも高くなりました。これから長く暮らす予定だったので、お風呂やキッチンなどの水回りは大事にしたいと相談して、妥協せずにリフォームしました。費用は、約700万円です。

でも、半年で移住生活を断念しなくてはならなくなり…。これだけ費用をかけたのに半年しか暮らせなかったので、余計に高く感じましたね。

―2~3年の教育移住を予定していた中、半年で断念となるとかなり短くなってしまったんですね。どのような経緯があったのでしょうか。

夫の仕事の都合です。これまでは、海外でのリモートワークをOKしてくれていましたが、会社の規定が変わり、長期の滞在ができなくなってしまったんです。聞いたときは「えー!」とビックリしました。交渉もしてくれましたが、認めてもらえませんでした。

「これだけ準備したのに……」と、すごく残念で。職場に移住先での仕事をOKしてもらったのが口頭だったので、きちんと書面でもらっておけば良かったという点は、後悔しています。

でも気持ちは切り替えて、「機会があったら、また帰ってこようね」と前向きに話すことにしました。

―予定外の帰国準備はどのように乗り越えましたか?

こども園に関しては退園の手続きをするだけなので難しいことは特にありませんでした。

購入した家も実家の家族に見てもらえることになり、本当に助かりました。アメリカへ帰国後も固定資産税などの税金や光熱費、保険料などの維持費はかかっていますが、今はAirbnbとして貸し出しながら、私たちが日本に帰ったときの自宅として使っています。

ただ、移住前に住んでいたアメリカの家にはすぐに帰れませんでした。長期間アメリカを離れる予定だったので、アメリカの家は長期での貸出をしていたんです。そのため帰国後は貸出期間が終了するまで、夫の両親の家で暮らしました。結果として、引っ越しを2回しなければならず、それが大変でしたね。

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わずか半年の移住生活――その中で見られた子どもの変化

―半年の移住生活の中で、お子さんの変化はいかがでしたか?

日本語が爆発的に出るようになりました。日本のこども園に通うようになったことが、大きく影響したと思います。やっぱり、これまでは日本語を聞き取れて理解も出来ていたので、あとはアウトプットするだけだったんだと思いましたね。

実は移住を終えてからも、帰省をする度に短期でこども園に通わせてもらっているんです。今は次女も通っているのですが、次女も日本語が一気に出るようになりました。

※一時帰国時のこども園への受け入れ可否や利用条件、必要な手続きは、自治体・施設によって異なります。事前に各自治体へご確認ください。

―語学の習得以外にも、移住して良かったと感じることはありますか?

日本の家族との時間をたくさんつくることができたことです。アメリカの夫の家族は、私たちの家から10分ほどのところに住んでいるので、よく会っています。でも日本の家族とは年に1回。長くても2か月ぐらいの滞在なので。

私の両親も、これまでなかなか会えなかった分、移住している間は手厚くサポートしてくれました。時々、母が新居にごはんをおすそ分けしに来てくれたり。そんな時間がとても良かったと思います。

―帰国した後のお子さんたちの変化はありましたか?

帰国直後は、英語よりも日本語での会話が多い印象がありました。しかしアメリカで暮らすうちに、だんだんと英語で話すことが増えてきました。それでも「日本語で話してみて」と言うと、以前よりも話せることは増えているので、日本語のレベルは下がっていないですね。

そして移住時に生まれたばかりだった長男は、現在2歳。一番最初に話した言葉は、なんと日本語なんです。息子との会話も、英語と日本語が半分ずつくらいです。

移住前は私だけが日本語を話していましたが、今では娘たちとの日本語での会話を聞いているので、息子はアメリカにいながらも日本語力を身につけているようです。

―移住を経験したからこそ、アメリカの生活で取り入れていらっしゃることはありますか?

「自分のことは自分でしよう」ということを伝えるようにしています。

現在、長女は7歳で小学生になりました。アメリカの学校は、家で学校の準備をする習慣がないんです。教科書や鉛筆は自分のものではなく、クラスのものという感じで、基本的に学校に置いてあります。だから、リュックサックにはお弁当と水筒だけを持って登校します。

日本では、教科書やノート、筆記用具など、前日に準備して学校へ行きますよね。だから「自分のものを準備する」という意識を持ってもらいたくて、できるだけ伝えるようにしています。

ほかにも、日本は掃除当番や、給食の配膳など学校ですると思いますが、アメリカではそれもありません。家庭で手伝ってほしいことを、学校で学ばせてもらえるのはすごくいいと思います。

アメリカにはない日本の学校教育を取り入れたいですし、また日本に移住して学んでもらいたいですね。

―次に日本へ教育移住するとしたら、同じく滋賀がいいですか?また、いつ頃したいですか?

滋賀への移住がいいですね。子どもたちは、帰省するたびに会うようなお友だちもできましたし。

タイミングは、子どもたちが小学校低学年のうちにしたいですね。そのぐらいのほうが、何でも吸収しやすい年頃だと思います。低学年なら、ひらがなや片仮名、簡単な漢字ぐらいで、勉強にもついていきやすいと思うので。高学年になると、難しくなりますもんね。

今まさに長女が小学校低学年なので、機会があれば行きたいです。

今年の実家への帰省の際には、学校や教育委員会から許可をいただいたうえで、地元の小学校で「体験入学」をさせてもらいました。娘の通うアメリカの学校は夏休みが6月前半に始まるので、1か月早めに休みに入って、ゴールデンウィーク明けから、日本の小学校の夏休みが始まるまで通いました。

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地元の小学校では体験入学を経験。

※海外からの一時帰国時における小学校への「体験入学」は全国一律の制度ではなく、受け入れ可否や期間、必要な手続きは自治体・学校によって異なります。事前に各自治体や教育委員会、学校へご確認ください。

―次女さんも地元のこども園に短期で通われたそうですね。

はい。一時帰国中は住民登録を移し、事前に園へ必要書類を提出するなど、必要な手続きをしたうえで、次女もこども園に通いました。ただ、手続きや受け入れ条件は自治体や施設によって異なると思うので、事前に確認したほうがいいと思います。

―教育移住や、その後の短期間の帰省生活で印象に残っていることはありますか?

長女が今年、日本の小学校に通ったときに、同級生から「何人なの?」と聞かれたそうなんです。子どもたちは日本とアメリカ、両方の国籍を持っているので、「半分日本人で、半分アメリカ人だよ」と伝えていました。だから長女は「日本人だよ」と答えたそうですが、同級生からは「違うでしょ」と言われたんだとか。長女は髪の毛が金髪で、容姿が日本人とは違うので、そう感じられたのかもしれません。

長女がそれで傷ついたということではないのですが、私たちがそれを聞いて「人種についても考えていかなくてはいけないんだな」と考えさせられました。

―最後に、教育移住を検討されている方へアドバイスをお願いします。

私たちの場合は、アメリカから日本だったので、治安への不安があまりありませんでした。アメリカだと、子どもたちだけで公園で待ち合わせをするなど、危なくてできないんです。

日本の平和な環境に慣れていると、海外では危ないこともあるので、子どもたちを守るためにも、移住先の治安はしっかりと確認してほしいですね。

また、私たちの場合は移住を途中で断念する形になりましたが、どれだけ準備をしていても想定外のことは起きると思います。でも「なんとかなる」という気持ちを持っていたので、心がひらけました。

実際に私たちは、形を変えて移住生活を続けられています。予定どおりにいかないことがあっても、焦らず、柔軟な思考を持ち合わせることも大切だと思います。

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取材後記

アメリカから日本に移住し、その後も毎年、短期でこども園や小学校に通う機会をつくられているスミスさん。これまでにない形で、非常に興味深い取材になりました。

語学や異なる教育・文化を学ぶことで、将来の選択肢を増やしてほしいというご両親の思い。わずかな時間でも大きな成果が表れていらっしゃいました。

スミスさんの場合、ご実家という頼れるご家族がいらっしゃるのも、大きなポイント。このように、「頼れる人がいる場所」や「慣れ親しんだ場所」があれば、教育移住を決断しやすいきっかけになるのかもしれません。

また、印象に残ったのは「何人なの?」と同級生に質問された娘さんのエピソード。娘さんは「日本人だよ」と答えたそうですが、その話を伺い、主にアメリカで暮らしながらも、自分のルーツのひとつとして日本を自然に捉えていることが伝わってきました。

日本とアメリカ、二か国の国籍をお持ちのお子さんたち。そして、アメリカでは「個としての学び」、日本では「集団での一員としての学び」と、違った学びをされていらっしゃいます。

想定外の展開がありながらも、柔軟な思考と工夫で、2か国での学びを続けることができる。選択肢は自分たち次第で広がることを、スミスさんご家族に教えていただきました。

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