海陽中等教育学校に合格!小6秋の志望校変更から3か月、子どもの「行きたい」を信じた母|親たちの中学受験体験記Vol.34
都内に住む橋本さん(仮名)一家は、一人っ子の長男により良い教育環境を用意したいと、中学受験を決めました。当初は都内の中高一貫校を志望していましたが、小6の夏、長男が自ら愛知県の全寮制・海陽中等教育学校を見つけ、「ここに行きたい」と希望します。
9月に家族で学校を訪れたことをきっかけに、志望校を海陽へ変更。受験本番までは約3か月しかありませんでした。限られた時間でどのように対策を進め、第一志望合格をつかんだのでしょうか。子どもの意思を尊重した学校選びや、親が「見守る」大切さに気づくまでの中学受験を振り返ってもらいました。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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目次
【保護者プロフィール】
| お名前 | 橋本 絵梨(仮名) |
|---|---|
| お住まい | 東京 |
| 年齢 | 50代 |
| 職業 | 会社員 |
| 性格 | 明るく前向き 思い立ったら行動するタイプ |
| 家族構成 | 3人家族(父、母、長男) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
| 子どもの名前 | 橋本 樹(仮名) |
|---|---|
| 性別 | 男子 |
| 現在通っている学校名 | 海陽中等教育学校 |
| 現在の学年 | 1年生 |
| 受験当時に通っていた塾 | SAPIX→早稲田アカデミー 併塾:TOMAS、プリバード |
| 受験時にしていた習い事 | ダンス |
| 得意科目 | 社会 |
| 苦手科目 | 算数 |
| 性格 | 明るく社交的・活動的で自立心が旺盛 |
| 偏差値 | 入塾時:60 受験直前期:60 |
| 受験結果 | 海陽中等教育学校:合格(第一志望) |
一人っ子の息子に合う学校を探して。学校選びで重視した3つの条件

―最初に、中学受験を考えるようになったきっかけ・理由を聞かせてください。
我が家は都内に住んでおり、息子は一人っ子です。私立も含め多様な学校を選べる環境にありました。選択肢があるのだから、学習カリキュラムや交友関係も含め、できる限り良い教育環境を与えたい。そう考え、早い時期から迷うことなく中学受験をすることを決めていました。
また、地元の公立中学校では内申点を取りにくいといわれていたことも理由の一つです。本人の努力不足であれば納得できますが、先生との相性に評価が左右されるのは避けたいなと。それも、中学受験を決める後押しになりました。
―受験する学校はどのように候補を挙げて、絞り込んでいきましたか?
当初、学校選びの条件として考えていたポイントは3つありました。
一つ目は、通学に時間がかかりすぎず、かつ近すぎないこと。電車で通う経験はさせたいものの、遠すぎると日々の移動時間がもったいないため、ドア・ツー・ドアで30分から1時間程度を目安にしていました。
二つ目は、共学である点です。息子は男女分け隔てなく誰とでも仲良くできるタイプなので、夫婦でも「共学のほうが本人の居心地が良いのではないか」とよく話していましたね。
三つ目は、偏差値です。同じ学力層の生徒が集まる基準として、重視したポイントでした。
基本的にはこの3つの軸をベースに、ある程度知名度や評判のある学校を候補としてリストアップしていきました。ただ、条件といっても「絶対」ではなく、息子に合う学校であれば柔軟に考えようと思っていました。
―受験に関する情報はどのように集めていましたか?
インターネットや進学フェア、塾で得られる情報を参考にしながら、興味のある学校は現地に足を運ぶようにしていました。実際に学園祭や説明会の機会に見に行ったのは、麻布や青学、渋谷教育学園渋谷などです。
その中で息子が選んだ最初の志望校は、青学でした。仲の良い女子の友だちが志望していた影響もあったと思いますが、中高一貫で6年間好きなことに打ち込める点に魅力を感じたようです。幼少期から習っているダンスを続けながら、都心の学校に通うイメージを思い描いていましたね。
小6の夏、自ら見つけた全寮制の海陽中等教育学校へ志望変更

―青学から海陽へと志望が変わったのは、どのような経緯だったのでしょうか?
小6の夏休み、息子が自分自身でさまざまな学校をYouTubeで調べているうちに、海陽を見つけて「ここに行きたい」と言い出しました。
背景には、「親が敷いたレールには乗りたくない」という彼なりの自立心の芽生えがあったのでしょう。加えて、息子は幼い頃から『ハリー・ポッター』が大好きだったので、全寮制の世界観に強く憧れたようでした。
―突然、愛知県(蒲郡市)の学校の名前が挙がり、ご両親の驚きも大きかったのでは?
実は小4の頃に、都内で開催された進学フェアで海陽のパンフレットをもらって話を聞く機会があり、名前と概要は知っていました。当時は「都内の学校に通うのが当たり前」と考えていたので、まったく気に留めていませんでした。予想もしていなかった展開に、本当にびっくりしましたね。
ただ、話を聞いていると、本気で行きたいという息子の気持ちが伝わってきました。
―それまで考えていた学校選びの条件とは大きく異なる選択ですよね。どのように受け止めましたか?
中学受験は基本的に親と子の二人三脚ですが、根本には「息子のやりたいことを応援したい」という思いがあります。どんなことでも、「自分で選択し、自分で行動してほしい」というのが理想でもあったので、頭ごなしに反対するのも違うなと。そこで、気分転換も兼ねて親子3人で9月の学園祭に行ってみることにしたんです。
海陽の学園祭での息子は、まるで水を得た魚のようでした。都内の学校を見に行ったときには見せなかったキラキラとした目で、自らどんどんイベントに参加していました。そんな姿を見てしまったら、もう腹をくくるしかないですよね。
さらに驚いたことに、同行した夫までも海陽の「建学の精神」にほれ込んでしまったんです。「いい学校じゃないか」と夫が真っ先に背中を押してくれたことも、決断の大きな要因となりました。私としては学費の懸念も頭をよぎりましたが、「本人のやりたいことを全力で応援しよう」と家族全員の覚悟が決まりました。
\わが子に合う志望校選びのポイント/

習い事と受験を両立するため転塾。子どもの自立を支えた塾の活用法

―ここからは、受験勉強の進め方についてお話を聞かせてください。本格的に塾に通い始めたのはいつ頃からですか?
幼稚園の頃から公文に通っていて家庭学習の習慣はついていたので、本格的な通塾は小3の2月、SAPIXからスタートしました。最初は一番上のα(アルファ)クラスに入れたこともあり、親としても「クラスを落としちゃいけない」というプレッシャーがありましたね。
SAPIXは成績によるクラス分けが明確な分、少しシビアな雰囲気もあり、息子にとっては少し質問しにくい環境だったようです。そこで、苦手科目の算数は個別指導も活用することにしました。最初はTOMASに通っていましたが、SAPIXと併用しやすいことから、途中からプリバードとの併塾に切り替えました。
―受験勉強を続ける中で、お子さんが特につらそうだった時期はありましたか?
小4から小5に上がる頃ですね。息子がダンスの選抜チームに入ったのですが、受験勉強との両立が難しくなり、モチベーションがガクッと下がってしまって。遊びたい盛りの小学生ですから、毎日毎日勉強に向かうのはきっとつらかったと思います。
それでも本気で辞めるという話にはなりませんでした。周りのお友達も受験をしていましたし、彼自身の中にも「途中で投げ出して辞めるのは嫌だ」と感じていたようです。
―小5でSAPIXから早稲田アカデミーに転塾されていますね。
はい。先ほどもお話ししたとおり、ダンスの選抜チームの活動とSAPIXの日程がぶつかってしまったのが大きな理由です。勉強に疲れが見え始めていた時期でもあり、ここで無理に受験一本に絞らせたら絶対に続かないと思いました。そこで、ダンスと両立できるように早稲田アカデミーに転塾し、集団・個別を組み合わせて通うことにしたんです。
―個別指導(TOMASやプリバード)を積極的に併用されたのには、どのような理由があったのでしょうか?
我が家の場合、受験全体を見ながら「この学校を受けるなら、この科目はこれくらいでいい」といった総合的な戦略を立ててくれる「監督」のような存在がほしいと考えていました。
一時期、私が監督役を担ってスケジュールを詰め込みすぎてしまったことがありました。でも、息子は親がつくったスケジュールを淡々とこなすタイプではなく、「自分で考えて行動したい」という自立心が強い子です。
親が口出しをすることで、どこか自分事化できていない節もありました。なので、第三者にうまくアドバイスやコントロールをお願いしたかったんです。
―親御さんではなく、先生から伝えてもらうようにしたのですね。
そうです。うちの子の場合は、親が「勉強しなさい」と言うとどうしても反発してしまいますから。個別指導の先生には、そんな事情も打ち明けて息子が「自分で考えた」と思えるようなコミュニケーションをお願いしていました。
特に、算数を見てくれた大学生の先生との出会いはありがたかったです。難関校を複数合格された優秀な先生だったのですが、息子にとっては少し年上の「お兄さん」のような絶妙な距離感でした。時には口喧嘩をするくらい仲が良くて。
先生が中学や高校、大学の楽しい話をしてくれることが良い息抜きになり、憧れにもつながっていたようです。大好きな先生がいることで塾に行くのが億劫ではなくなり、楽しくモチベーションを保つことができました。
―塾を活用する中で、特に「やって良かった」と思える具体的な勉強法はありますか?
まず、暗記科目である社会は、SAPIXが出している『コアプラス』という一問一答のテキストを何度も反復したのがすごく効果的でした。このおかげで、今でも社会は得意科目になっています。
苦戦した国語は、オンライン家庭教師にお願いしてテストの見直しを徹底的にやってもらいました。問題をコピーしてノートに貼り、「なぜ間違えたのか」「どうすれば答えにたどり着けたのか」をマンツーマンで解説してもらう中で、理解が深まったと思います。
算数などの苦手分野は、できなかった問題を見直すサイクルをつくり、とにかく回数をこなすことで少しずつ力がついていきましたね。
成績はアップダウンがありましたが、自習が習慣となり、わからないことは積極的に大人に聞きに行けるようになりました。周りの子が頑張っているのを見て、「自分もやらなくては」と良い刺激を受けていたのだと思います。
\塾の活用方法とモチベーション維持のポイント/

わずか3か月の短期集中。「背水の陣」で挑んだ海陽受験

―秋に志望校を海陽に絞ってから、12月の受験本番まではかなり時間が限られていたかと思います。対策はどのように進めたのでしょうか?
小6の秋に受験を決めたので、12月の本番まで本当に時間がありませんでした。個別指導の先生に相談したところ、「今から海陽の過去問対策を始めるなら、本来やるべき2月の東京受験に向けた対策はできなくなる。東京受験は難しくなるかもしれない」と言われました。
そこからの3か月は、個別指導で海陽の対策だけを徹底的にやってもらいました。海陽は関西や中部圏の出題傾向に近く、算数がすごく難しかったり、これまで解いたことがないような特殊な問題が出たりするんです。そのため、過去問5年分を3周して徹底的に傾向を叩き込みました。この志望校対策をやっていなかったら、絶対に合格は無理だったと思います。
―海陽は保護者同伴の面接もありますよね。
はい。全寮制ということもあり、面接というよりも保護者がしっかり納得しているかを確認するための面談だといわれました。我が家は9月に学園祭へ足を運んだ際、副校長先生と家族で面談をしていただいたんです。
面談では学校の印象や他の受験校などを聞かれて、思ったよりも「面接っぽい」雰囲気はありましたね。正直、特別な練習などはしていなかったので、息子は敬語もうまく話せない状態でした。
「東京ではどこを受ける予定ですか?」という質問に、本人が「他は受けずに、この学校に来ます」と堂々と宣言していたのには驚きましたね。初めて学校を訪れた当日なのに、それくらい大きな感動があったんだなと感じました。
―受験は海陽のみだったそうですが、他校への出願は進めていたのですか?
入試日程が12月中旬頃だったこともあり、出願も海陽一本でした。合格発表は入試の数日後だったので、万が一合格に届かなければ、急いで他校への出願を進めようという「背水の陣」。あの頃は、海陽に合格することしか頭になく、その目標に向かうのに必死でしたね。
―海陽に出会ってからの息子さんのモチベーションが、それだけ高かったのですね。
ええ。それまでは親としても、「勉強しなさい」と言っても効かない子の気持ちをどう盛り上げていいかわからず、試行錯誤ばかりでした。それが、海陽を目指すと決めてからは私が何も言わなくても、自分から机に向かっていました。声掛けをする必要がないくらい、すごく集中していたと思います。
―そして迎えた12月の受験本番。当日のご様子はいかがでしたか?
当日は東京の水道橋にある受験会場まで、夫と一緒に車で送って行きました。私自身がすごく緊張していたので、冷静に見られていなかったのかもしれないですが、息子はすごく落ち着いているように見えました。
受験が終わって数週間たってから、「人生で一番緊張した」と言っていました。そうは見えなかったけれど、彼なりにものすごいプレッシャーと向き合いながら臨んだ大勝負だったのでしょう。
―無事に合格をいただいたときのお気持ちは?
何よりも、「一安心」の一言でした。合格発表の日は仕事でいなかった夫にLINEで「受かったよ」と連絡し、「よかったね!」と喜びを分かち合いました。長い道のりでしたが、本人の頑張りが実を結んで本当に良かったです。
\受験本番期を走り切るためのポイント/

中学受験で気づいた「見守る」大切さ。自ら選んだ寮生活で育った自立心
―中学受験を乗り越えて、ご家族や息子さんにどのような変化や成長がありましたか?
一番の収穫は、「この子は自分で考え、行動するほうがうまくいくんだ」と私自身が改めて理解できたことです。
受験期間中は、「小学生らしい生活ができていなかったのではないか」と申し訳なく思う気持ちがありました。つい手出し・口出しをしてしまったところもありますが、最終的には本人が決めた志望校合格に向けて、自分の力でやり遂げました。
親に言われてやるのではなく、自ら選択し「合格」という成功体験をつかんだことは、彼にとって大きな糧になったと思います。私たち夫婦にとっても、親としての見守り方を学んだ大事な期間でした。

―入学後の息子さんのご様子はいかがですか?
精神的にすごく大人になりましたね。もともとコミュニケーションが得意な子とはいえ、入学当初はストレスもあったようです。一人っ子なので、家にいれば「生存競争」のない環境でしたが、寮での集団生活ではそうはいきません。人間関係の距離感や協調性をしっかり学んでいます。
親元を離れた環境でさまざまな経験をしながらたくましく成長している姿を見ると、この学校に行かせて良かったと思いますね。
―今後の進路についてはどのようにお考えですか?
中高一貫校ではありますが、6年間そのまま海陽にいるかは分かりません。
学年の人数が決まっているため、3年も経てば人間関係も環境も「狭い世界」になってしまいますよね。中学で寮生活をしっかり経験した後は、高校から海外進学も視野に入れています。息子の誰とでも話せるコミュニケーション能力の高さやチャレンジ精神を見ていると、「広い世界」に出たほうが伸びるだろうなと感じています。
本人に海外進学の話をしてみたら、「全然なくはない」と前向きな反応でした。中学生から本格的に英語の勉強も頑張っています。すでに寮生活を経験しているので、海外に行ってもきっと大丈夫だろうという安心感もありますね。
―親御さんが少し先の選択肢を見せてあげることで、息子さんの世界がどんどん広がっていきますね。
本人が「行きたい」と言わなければどうしようもありませんけど(笑)。今後もそうやって外の世界へ目が向くように、一歩先の選択肢を示しながら息子が選ぶ道を応援していけたらと思っています。
\中学受験を通じて親子が得たもの/

取材後記
自分で進む道を選ぼうとする長男の思いを受け止め、全寮制学校への挑戦を支えた橋本さん一家。子どもを信じて見守り、家族で応援する姿勢が強く印象に残るインタビューでした。
小6の夏、長男が自ら見つけた愛知県の全寮制学校を「ここに行きたい」と志望したことから、家族の学校選びは大きく動き始めます。予想もしていなかった志望校変更であっても、両親は頭ごなしに反対しませんでした。
本人の願いを否定せずに耳を傾け、一緒に現地へ足を運ぶ。そんな柔軟なサポートがあったからこそ、長男自身も「心から行きたい」と思える学校を選び、その目標に向かって受験勉強に取り組めたのではないでしょうか。
“親子の受験”といわれることもある中学受験。親は子どもの受験にどこまで関わり、どこから見守るのか。その距離感に悩む保護者も少なくないでしょう。橋本さん一家のエピソードは、子ども自身の「行きたい」「やりたい」という気持ちを尊重することの大切さを改めて感じさせてくれました。
執筆者プロフィール
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