通級とは?どんな子が対象?利用を考えるときに知っておきたいことをわかりやすく解説
「先生から通級について話があったけれど、うちの子に本当に必要?」子どもの学習や学校生活の様子が気になったり、「通級」という言葉を初めて聞いて戸惑ったりする方がいるかもしれません。
通級とは、通常の学級で過ごしながら、一部の時間に、学習や生活の中で感じている困りごとに応じた特別の指導です。通常の学級での学びを大切にしながら、子どもの状態や教育的ニーズに応じて、自分に合った学び方や必要な力を身につけていきます。
この記事では、国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター総括研究員 井上秀和先生の監修のもと、通級とほかの学びの場との違い、対象となる子ども、実際の指導内容、利用までの流れや、利用を考えるときに知っておきたいポイントなどを解説します。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
井上秀和
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター総括研究員。宮崎県の公立高等学校、公立特別支援学校、教育研修センター及び教育委員会を経て現職。国立特別支援教育総合研究所では、令和3〜4年度重点課題研究「通常の学級に在籍する多様な教育的ニーズのある子供の教科指導上の配慮に関する研究」、令和5〜7年度重点課題研究「多様な教育的ニーズのある子供の学びの場の充実に関する研究」、令和8〜9年度横断的研究「通常の学級を基盤とする重層的な指導・支援の在り方に関する研究」の研究代表を務める。
目次
通級は、ほかの学びの場とどう違う?

通級とは、普段は通常の学級で過ごしながら、一部の時間に子どもの困りごとにあわせた指導や支援を受ける制度です。
特別支援学級のように在籍する学級を変えるのではなく、在籍は通常の学級のままという点が大きな特徴です。
指導や支援、学びの場はひとつではなく、通常の学級での配慮や通級による指導、特別支援学級、特別支援学校など、子どもの状態や教育的ニーズに応じた選択肢があります。
学びの場ごとの在籍と指導や支援の特徴は次のとおりです。
| 学びの場 | 在籍 | 学び方・指導や支援の特徴 |
|---|---|---|
| 通常の学級 | 通常の学級 | クラスで一緒に学び、必要に応じて配慮を受ける |
| 通級(通級による指導) | 通常の学級 | 一部の時間だけ、個別の困りごとに応じて個別又は小集団で指導を受ける |
| 特別支援学級 | 特別支援学級 | 少人数の学級で、障害の状態や教育的ニーズに応じた指導を受ける |
| 特別支援学校 | 特別支援学校 | 障害の状態や教育的ニーズに応じた専門的な指導を受ける |
通級・特別支援学級・特別支援学校は、指導や支援の必要度が軽い順・重い順に並んでいるわけではありません。そのときの子どもの状態や必要な支援に応じて、子どもに合った学びの場を考えましょう。
通級に行っている間、授業の内容はどう補われる?
通級を利用する時間帯は、地域や学校によって異なります。通常の学級の授業時間と重なる場合は、抜けた授業の内容を別のタイミングで補ったり、家庭学習で対応したりする場合があります。
補い方は地域や学校の体制によって異なるため、利用前に「どの授業の時間に通級を利用するのか」「抜けた授業内容はどう補うのか」を確認しておくとよいでしょう。
井上先生のアドバイス
通級はそれだけで学びが完結するものではありません。学校生活の中心となる通常の学級で過ごしながら、通級を利用し、その学びを普段の学習や生活に生かしていくことが大切です。
そのためには、通級の担当者だけでなく、通常の学級の担任や教科担任などがお子さんの様子や指導の目標・内容を共有し、それぞれの場での学びをつないでいくことが重要です。
通級には「自校・他校・巡回」がある
通級には、主に三つの指導形態があります。
- 自校通級:在籍している学校で指導を受ける
- 他校通級:通級を実施している別の学校へ通って指導を受ける
- 巡回指導:通級担当の教員が在籍校を訪れて指導する
どの形で実施されているかは、学校や地域によって異なります。他校通級では、別の学校への移動や送迎が必要になる場合もあります。
井上先生のアドバイス
通級の利用を考える場合、指導形態は、お子さんやご家庭の生活に影響を与えるかもしれない大切な視点です。
自校通級や巡回指導では、在籍する学校で指導を受けるため、学校の体制によっては、学級担任や教科担任と通級担当者が普段の学校生活の様子や指導内容を共有しやすい場合があります。
一方、他校通級では、普段とは異なる環境だからこそ安心して取り組める子どももいれば、新しい環境や移動を負担に感じる子どももいます。送迎の必要性なども含め、お子さんやご家庭に合った通い方を考えることが大切です。
特別支援学級との違い
通級と特別支援学級では、在籍する学級や学び方などが異なります。
| 学びの場 | 通級による指導 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 在籍する学級 | 通常の学級 | 特別支援学級 |
| 学び方 | 通常の学級で学びながら、一部の時間に必要な指導を受ける | 特別支援学級を中心に、障害の状態や教育的ニーズに応じて学ぶ |
| 指導の特徴 | 学習や生活での困りごとに応じた「特別の指導」を受ける | 障害の状態や教育的ニーズに応じた教育を受ける |
井上先生のアドバイス
通級と特別支援学級を比べると、「どちらの指導や支援が手厚いのだろう」と考えることがあるかもしれません。
しかし、単純に指導や支援の手厚さで比べるものではありません。お子さんの学習や生活での困難さや障害の状態、必要な支援などを踏まえて、どのような学び方が適しているかを考えることが大切です。
また、学びの場は一度決めたら変えられないものではありません。お子さんの成長や変化を確認しながら、学校や教育委員会と一緒に考えていくことが大切です。
通級と療育の違い
通級と特別支援学級を比べたときと同じように、通級と療育も「どちらを選べばよいのか」と迷うことがあるかもしれません。通級は学校教育の一環として行われる「特別の指導」です。
一方、「療育」は、子どもの発達を支えるための支援を広く表す言葉として使われ、福祉や医療などの関係機関で行われるものもあります。
井上先生のアドバイス
通級と療育は、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。通級では、学校教育の中で、お子さんの学習上・生活上の困難さに応じた特別の指導を行います。
一方、療育と呼ばれる支援には、発達やコミュニケーション、日常生活などを支えるさまざまな取組があります。
大切なのは、それぞれの役割を踏まえ、お子さんにどのような支援が必要かを考えることです。必要に応じて、学校と関係機関が情報を共有し、それぞれの支援をつなげていくことも大切です。
通級と放課後等デイサービスの違い
通級と療育を比べたときと同じように、通級と放課後等デイサービスも「どちらを選べばよいのか」と迷うことがあるかもしれません。
通級は学校教育の一環として行われる「特別の指導」、放課後等デイサービスは児童福祉法に基づく福祉サービスです。両者は制度や目的が異なるため、必要に応じて併用する場合もあります。
井上先生のアドバイス
「通級と放課後等デイサービスは併用できるの?」「どちらを優先すればよいの?」と迷うことがあるかもしれません。
両者は、学校教育と福祉という異なる制度であり、どちらか一方を選ぶものではありません。大切なのは、それぞれの目的や役割を踏まえ、お子さんにどのような支援が必要かを考えることです。
両者を利用する場合には、お子さんの負担にも配慮しながら、必要に応じて学校と事業所が支援の目標や様子を共有し、それぞれの取組をつなげていくことも大切です。
通級を利用すると、どのような学びにつながる?

通級には、通常の学級での学校生活を続けながら、子どもの困りごとに応じた指導を受けられるという特徴があります。
子どもの困りごとに応じた指導を受けられる
同じ診断名や似た困りごとであっても、その現れ方や必要な支援は子どもによって異なります。通級では、診断名だけではなく、子どもの学習上・生活上の困難さや学校生活での様子などを踏まえて、指導の目標や内容を考えます。
井上先生のアドバイス
例えば、学習障害(LD)や注意欠如多動症(ADHD)の診断が同じであっても、困っていることや得意なこと、学びやすい方法は、それぞれ異なります。また、似たような困難さであっても、その背景が同じとは限りません。
通級では、診断名だけで指導内容を決めるのではなく、お子さんの特性や学校生活での様子を丁寧に把握し、何を目標に、どのような方法で学ぶことが適切かを考えることが大切です。
お子さん自身の得意なことや学びやすさにも目を向けながら、指導を考えます。
通常の学級での生活を続けながら学べる
通級を利用しても、学校生活の中心は通常の学級です。通常の学級で学習したり、友達と活動したりしながら、一部の時間に指導を受けられます。
井上先生のアドバイス
通級を利用しても、お子さんの学校生活の中心は通常の学級です。
通常の学級で友達と学んだり、さまざまな活動に参加したりする経験を大切にしながら、一部の時間に通級で必要なことを学びます。
また、通級で学んだことを通常の学級で生かし、通常の学級での困難さを通級の指導につなげることも大切です。
このように二つの学びの場をつなぐことは、お子さんが通常の学級で学びやすく、過ごしやすくなるために重要です。
自分に合った学び方や対処方法を身につけられる
通級では、苦手なことを繰り返し練習するだけではなく、自分に合った学び方や困ったときの対処方法などを学びます。こうした経験が「この方法ならできる」という自信につながったり、将来、自分に必要な支援を周囲へ伝える力につながったりすることもあります。
井上先生のアドバイス
読む、書く、計算するなどに困難さがあると、「もっと練習すればできる」と考えてしまうこともあるかもしれません。
しかし、大切なのは、苦手なことを繰り返し練習するだけではなく、なぜ難しさを感じているのかを丁寧に捉え、その子に合った学び方を考えることです。
通級では、得意なことも生かしながら、自分に合った方法や工夫を学ぶことができます。こうした学びを通常の学級でも活用し、お子さん自身が「この方法ならできる」と感じられるようになることも、通級で期待される大切な学びです。
通級の対象となる子ども

ここまでの内容を見て、「うちの子も対象になるのだろうか」と気になる方もいるでしょう。通級を利用するかどうかは、診断名だけで判断されるものではありません。
対象となる主な障害と困難さ
文部科学省初等中等教育局長通知(25文科初第756号)では、通級による指導の対象として、次の障害が示されています。
- 言語障害
- 自閉症
- 情緒障害
- 弱視
- 難聴
- 学習障害(LD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 肢体不自由
- 病弱・身体虚弱
同じ障害であっても、学習や生活での困難さの現れ方は子どもによって異なります。
井上先生のアドバイス
「診断があるから通級が必要」「診断がないから通級を利用できない」というものではありません。
実際の学校生活では、読む・書くことに時間がかかる、集中を続けることが難しい、友達とのやり取りで困るなど、困難さの現れ方は子どもによって異なります。
診断名だけで判断するのではなく、学習や生活面において、お子さんがどのような困難さを感じているのか、その背景には何があるのかを丁寧に把握しながら、支援を考えていくことが重要です。
通級の対象はどう決まる?診断がなくても利用できる?
通常の学級での学習におおむね参加でき、必要に応じて一部特別な指導を必要とする子どもが対象となります。通級を利用するかどうかは、医学的な診断の有無だけで決まるものではありません。
学校での学習や生活の様子から困難さを把握し、子どもや保護者の意向、専門家等の意見も踏まえて総合的に判断されます。
必要な手続きや書類は地域によって異なるため、詳しくは学校や教育委員会に確認しましょう。
参考:初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド|文部科学省
井上先生のアドバイス
通常の学級の担任は、一斉指導の中でも、一人一人の学び方の違いや、得意なこと、苦手なことに目を向けています。
学習や生活の中で困難さが見られた場合には、単に「苦手だから」と通級を考えるのではなく、特別支援教育コーディネーター等と、その背景に何があるのかを考えます。
その上で、その子どもを含めた学級全体への指導を工夫するとともに、必要に応じて個に応じた手立てを講じます。そして、その手立てが本人に合っているか、どのような変化が見られたかを子どもとともに確かめ、必要に応じて見直していきます。
こうした取組を重ねながら、通常の学級でどの程度の困難さが生じているのかを捉え、通級による指導の必要性を検討していきます。
通級では何をする?内容と指導方法

通級は、単に学習の遅れを補うための「補習」の場ではありません。子どもの学習や生活での困りごとと、その背景に応じて指導内容が検討されます。
どんな指導が行われる?
指導を担当するのは、通級担当の先生です。教科の補充ではなく、学校生活の困りごとを減らすための「コツや対処法」を子どもと一緒に考えてもらえます。例えば、次のような内容に取り組みます。
- 学習の工夫:マス目ガイドや定規を使い、読み書きや集中のコツを試す
- 対人関係(SST):ロールプレイを通じ、友達への頼み方や適切な距離感を練習する
- 感情の整理:気持ちを数値化し、イライラしたときの対処法(深呼吸や休憩)を身につける
参考:障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A|文部科学省
井上先生のアドバイス
「通級では、苦手な教科を教えてもらえるの?」と思われる方もいるかもしれません。
通級は、単に学習の遅れを取り戻すための補習の場ではありません。学習上・生活上の困難さに目を向け、その背景を考えながら、学校生活をより送りやすくするための力を身につけていくことが大切です。
例えば、学習の仕方を工夫する、相手とのやり取りの方法を学ぶ、自分の得意なことや苦手なことを知り、自分に合った方法を考えるといった指導があります。こうした学びを、通常の学級や日々の生活に生かしていくことも通級の大切な役割です。
個別指導と少人数指導の違い
通級では、子どもの実態や指導目標に応じて、個別または少人数で指導が行われます。
井上先生のアドバイス
個別指導には、お子さんのペースに合わせて、通級を担当する教員との対話を通じて、困っていることや身につけたいことにじっくり取り組みやすいという特徴があります。
一方、少人数での指導では、ほかの子どもとのやり取りや一緒に活動する経験を通して、学んだことを活用することができます。個別と少人数のどちらが良いのかではなく、お子さんが何を学ぶのか、そのためにどのような指導の形が適しているのかという視点が重要です。
必要に応じて、両方を組み合わせることも考えられます。
通級の時間や頻度はどのくらい?
小・中学校では、通級の授業時数は年間35〜280単位時間を標準としています。学習障害(LD)や注意欠如多動性障害(ADHD)のある子どもについては、年間10〜280単位時間が標準とされています。
高等学校では、通級により修得した単位を、年間7単位を超えない範囲で卒業に必要な単位に加えることができます。
参考:初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド|文部科学省
井上先生のアドバイス
通級の時間や頻度を考えるときには、まず、子どもが通常の学級で安心して学び、過ごせることを大切にします。
その上で、学習や生活上の困難さだけでなく、指導の目標や通常の学級での様子、通級で学んだことを普段の学校生活でどの程度生かせているかを確認します。また、必要に応じて、ICT機器などを活用した代替手段や合理的配慮についても検討します。
困りごとによって不安が生じたり、安心して過ごすことが難しくなったりしている場合には、子どもと丁寧に対話することも大切です。こうした子どもの様子や変化を継続的に見ながら、必要な時間や頻度を考え、見直していきます。
通級を相談するか迷ったら、お子さんの様子を確認しよう

「対象には当てはまりそうだけれど、実際に相談するほどなのだろうか」と迷う方もいるでしょう。まずは、お子さんの学習や学校生活の様子を振り返ってみましょう。
このチェックは、通級の利用が必要かどうかを判断したり、診断したりするためのものではありません。子どもが何に困っているのかを整理し、学校に相談する際の参考として活用してください。
お子さんの様子を確認するためのチェックリストは次のとおりです。
| 観点 | 確認したい様子 |
|---|---|
| 学習面 | 宿題にとても時間がかかることがある |
| 学習面 | 読む・書く・計算するなど、特定の学習でつまずきが見られる |
| 学習面 | 授業で学んだことを理解したり、説明したりすることが難しいことがある |
| 集団生活 | 指示を聞き逃し、何をすればよいか分からなくなることがある |
| 集団生活 | 授業中、落ち着いて活動することが難しいことがある |
| 集団生活 | 活動や気持ちの切り替えに時間がかかることがある |
| 対人関係 | 友達との関わり方や距離の取り方に難しさが見られる |
| 対人関係 | 嫌だったことや困ったことを、言葉で伝えることが難しいことがある |
| 子どもの気持ち | 学校に行くことへの不安や負担を感じている様子がある |
| 子どもの気持ち | 「どうせできない」など、自信をなくしているような言葉が増えている |
| 学びやすい環境 | 1対1で説明すると理解しやすい |
| 学びやすい環境 | 静かな環境では集中しやすい |
大切なのは、当てはまる項目の数ではありません。一つの困難さでも学校生活への影響が大きいことがあります。また、同じような様子でも、その背景は子どもによって異なります。
井上先生のアドバイス
家庭でのお子さんの姿と、学校での姿が異なる場合があります。家庭では気にならなくても、授業や集団活動、友達との関わりの中で困難さが見られることがあります。
一方、学校では頑張って過ごし、家庭に戻ってから疲れや不安が表れることもあります。学習面、集団生活、対人関係、子どもの気持ちなどを幅広く見ながら、学級担任や教科担任にも学校での様子を聞くとよいでしょう。
また、年齢や発達の段階に応じて、お子さん自身に、困っていることや取り組みやすいこと、どのような手助けがあるとよいかなどを聞くことも大切です。
通級がある日の過ごし方

ここまでで通級の内容がわかっても、実際の学校生活をイメージしにくい方もいるでしょう。通級がある日の一例を紹介します。
通級がある日の流れ
以下は、小学校における自校通級の場合の一例です。実際の時間や指導の受け方は、学校や子どもによって異なります。
小学校・自校通級の1日の流れの例は次のとおりです。
| 時間 | 過ごし方 |
|---|---|
| 1時間目 | 通常の学級(国語) |
| 2時間目 | 通級 |
| 3時間目 | 通常の学級(算数) |
| 給食・昼休み | 通常の学級 |
| 午後 | 通常の学級(図工) |
他校通級では別の学校への移動が必要になるため、移動時間や送迎方法も含めて確認しておく必要があります。
保護者が事前に確認したいこと
通級における保護者の関わり方や負担は、自校通級・他校通級・巡回指導などの実施形態によって変わります。利用前には、次のような点を確認しておくと、実際の生活をイメージしやすくなります。
- 他校通級の場合の「送迎」:別の学校に通う場合、安全上の観点から原則として保護者の送迎が必要になります。平日日中の移動や仕事の調整が可能か、事前の確認が必須です。
- 通級の曜日・時間と授業の補い方:授業時間帯と重なる場合、抜けた授業をどう補うか(放課後、家庭学習など)を担任と調整します。
- 連絡方法や面談の頻度:通級連絡ノートの使い方や、学期ごとの面談スケジュールを確認しておきます。
井上先生のアドバイス
通級の利用を始めてから注意しておきたいこととして、通級に伴う子どもの負担があります。
たとえば、他校通級では、送迎の方法だけでなく、移動にかかる時間や疲れ、その前後の学校生活への影響も考えておく必要があります。
また、通級の曜日や時間が決まっている場合には、同じ授業を継続して抜けることがないか、そのことで学習に負担が生じないかも確認しておきたい点です。
通級の時間だけを見るのではなく、登下校や授業、家庭での生活も含めて、子どもが無理なく続けられるかという視点から考えておくことが大切です。
通級の利用前に確認しておきたいこと

通級そのものが合わなかったというよりも、利用前の確認や子どもとの話し合いが十分でなかったことで、あとから「もう少し考えておけばよかった」と感じる場合があります。
特に確認しておきたい二つのケースを紹介します。
周囲の目が気になり、通級の利用をためらった
「通級を利用すると、ほかの保護者や子どもたちからどう見られるだろう」と心配になる方もいるでしょう。文部科学省の最新調査(令和6年度)では、通級を利用する児童生徒は全国で230,405人にのぼります。
公立小学校では全体の80.2%の学校に通級を利用する子がおり、児童数で見ると約30人に1人(3.2%)の割合です。
井上先生のアドバイス
子ども自身が周囲の目を気にして、通級に行くことに不安を感じる場合があります。そんなときは、何が気になっているのか、どうすれば安心できそうか、まずは子どもの気持ちを聞いてみましょう。
その上で、通級へ移動する時間帯や教室への行き方、周囲の子どもへの伝え方などを学校と相談することができます。
子どもによっては、本人の希望を踏まえて、自分のことや必要な支援について作文などにまとめ、クラスメイトに伝えることもあります。もちろん、あえて伝えないという選択も大切にされます。
利用を始めたあとも子どもの気持ちを確かめながら、安心して通級を利用できる方法を学校と一緒に考えていきましょう。
子どもへの説明が十分でなく、不安や抵抗につながった
通級を利用するときには、子ども自身が「なぜ通級に行くのか」「そこで何を学ぶのか」を理解できるようにすることも重要です。
井上先生のアドバイス
子どもに通級について話すときは、まず「誰にでも得意なことや苦手なことがあり、得意なことを生かして苦手なことを補う方法もある」と伝えてみましょう。
その上で、通級は「苦手だから行く場所」ではなく、「授業や学校生活で困ったときに、自分に合った方法を一緒に探す場所」など、本人が目的をイメージできる言葉で説明することが大切です。
「行きたくない」と言われたときも、すぐに結論を出すのではなく、何が嫌なのか、何に不安を感じているのか、まずは話をしっかり聞きましょう。大人が子どもの気持ちを受け止め、肯定的に向き合う経験を重ねることが、安心感につながります。
その上で、本人が納得して取り組める方法を学校と一緒に考えていきましょう。
通級の利用方法と流れ

通級の利用を検討する場合、まずは学校へ相談するところから始まります。一般的な流れは次のとおりです。
保護者が通級の利用を相談してから、指導が始まるまでの流れの例は次のとおりです。
| 流れ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 保護者が学級担任や教科担任、特別支援教育コーディネーターなどに相談する |
| 2 | 家庭や学校での子どもの様子、困っていることなどを共有する |
| 3 | 担任と共に子どもに必要な指導・支援を検討する |
| 4 | 必要に応じて教育相談や教育委員会などでの手続きを進める |
| 5 | 通級の利用方法や指導の目標・内容などを確認し、指導を開始する |
実際の手続きや流れは地域や学校によって異なります。
井上先生のアドバイス
学校に相談してすぐに通級の利用が決まるわけではありません。まずは、家庭と学校でお子さんの学習や生活の様子、困っていることなどを共有し、どのような指導や支援が必要なのかを一緒に考えます。
その中で、通常の学級でできる支援を考えたり、必要に応じて通級について検討したりします。相談は、通級を利用するかどうかを決めるためだけのものではありません。お子さんに合った学び方や支援を学校と一緒に考えるための大切な機会です。
相談するときに伝えるとよいこと
相談する際には、次の内容を分かる範囲で整理しておくと、学校と子どもの様子を共有しやすくなります。
- いつ頃から、何が気になっているか
- 学習や学校生活で困っていること
- 家庭での様子
- 学校から伝えられている様子
- 子ども自身が困っていることや気持ち
- すでに受けている指導・支援、配慮
- どうすれば取り組みやすいか
すべてを整理してから相談する必要はありません。分かる範囲で伝え、学校での様子も聞きながら整理していきましょう。
利用開始のタイミング
通級については、年度の途中でも学校に相談できます。一方、実際に通級を開始できる時期は、学校や地域の手続き、実施体制などによって異なります。
井上先生のアドバイス
通級について相談する時期は、年度初めとは限りません。子どもの学習や学校生活で気になることがあれば、年度途中でも学校に相談してみましょう。
相談したからといって、すぐに通級の利用が決まるわけではなく、開始までに時間がかかる場合もあります。その間も、利用開始を待つのではなく、今ある困りごとに応じて、通常の学級でできる支援を考えることが大切です。
たとえば、座席の位置、課題の量や示し方、指示の伝え方、ICT機器の活用など、子どもが学びやすくなる方法を学校と相談することができます。実際の様子や支援による変化を確認しながら、その子どもに合った支援を一緒に考えていきましょう。
通級に関するよくある質問

通級を勧められたのですが、どうすればいいですか?
学校から通級を勧められた場合は、まず、学校が子どものどのような様子から通級を勧めているのか、どのような指導を想定しているのかを確認しましょう。
井上先生のアドバイス
通級を勧められたからといって、その場ですぐに利用を決める必要はありません。
まずは、学校でお子さんが何に困っているのか、なぜ通級を勧められているのか、通級では何を学ぶのかを具体的に確認することが大切です。家庭でのお子さんの様子や子どもの気持ちについても学校と共有しましょう。
その上で、通級がお子さんにとってどのような学びにつながるのかを学校と一緒に考え、納得した上で利用について検討することが大切です。
いじめやからかいにつながることはある?
通級を利用することで、友達から何か言われたり、からかわれたりしないかと心配になる方もいるでしょう。
井上先生のアドバイス
通級を利用する際に大切なのは、お子さんが安心して学べる環境を整えることです。
ただし、お子さんが友達からどう見られるかを気にしたり、不安を感じたりする可能性はあります。そのような場合には、子どもや保護者の意向を踏まえながら、通級する時間や移動の仕方、周囲の子どもへの伝え方など、必要な対応について学校と相談することが大切です。
お子さんが安心して通級を利用できる環境を、子ども・保護者・学校で一緒に考えていくことが大切です。
通級は将来の進学や内申に影響する?
通級を利用していることだけを理由に、進学に不利になると考える必要はありません。一方、通級の記録や学習評価、入学者選抜における取扱いなどについて気になる場合は、学校に確認しておくとよいでしょう。
井上先生のアドバイス
「通級を利用すると、進学や内申で不利になるのでは」と心配される保護者もいるかもしれません。大切なのは、通級の利用そのものと、通常の学級での学習評価や入学者選抜の取扱いを分けて考えることです。
特に、通常の学級の授業時間に通級を利用する場合には、その時間の学習や評価がどのように扱われるのかを学校に確認しておくとよいでしょう。
また、入学者選抜の仕組みは地域や学校段階によって異なります。気になる場合には、学級担任や進路担当者などに具体的な取扱いを確認することが大切です。
通級は途中でやめることができる?
通級は、一度利用を始めたら、そのまま続けなければならないものではありません。子どもの成長や学校生活での様子、指導の必要性などを踏まえながら、通級を続けるかどうかを見直していきます。
参考:初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド|文部科学省
井上先生のアドバイス
通級は、利用を続けること自体が目的ではありません。お子さんの成長や学校生活での変化を確認しながら、指導の目標や内容、通級を続ける必要性について見直していくことが大切です。
「通級での目標が達成できた」「今の指導内容が合っているのか気になる」など、保護者や子どもが感じていることも学校に伝えましょう。
通級を修了する場合も含め、今後どのような指導・支援が必要なのかを、子どもの気持ちも大切にしながら学校と一緒に考えていくことが重要です。
まとめ 通級は子どもに合った支援を考える選択肢の一つ

通級は、通常の学級に在籍しながら、一部の時間に学習や生活面の困りごとに応じた指導を受ける制度です。通常の学級での生活を続けながら、子どもの困りごとに応じた指導を受け、自分に合った学び方や対処方法を身につけられることが特徴です。
利用するかどうかは診断名だけで決まるものではありません。子どもが学校生活の中で何に困っているのか、どのような支援が必要なのかを踏まえて検討されます。
通級が気になっている場合は、まず学校での子どもの様子や、通級ではどのような指導を想定しているのかを確認してみましょう。
井上先生のアドバイス
通級を利用するか迷ったときは、まず、子どもがどのようなことに困り、どのような環境や方法なら安心して力を発揮できるのかを考えてみてください。
通級は、困りごとに対応するだけでなく、自分に合った方法を学び、それを日々の学校生活に生かしていくための場所でもあります。そして将来、自分の状況を周囲に伝え、必要な支援や合理的配慮について相談したり、困ったときには周囲に助けを求めたりする力につなげていくことも大切です。
通級を利用すること自体を目的とせず、今の学びと将来の生活の両方を見据えて、その子どもに合った支援を一緒に考えていきましょう。
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター総括研究員。宮崎県の公立高等学校、公立特別支援学校、教育研修センター及び教育委員会を経て現職。国立特別支援教育総合研究所では、令和3〜4年度重点課題研究「通常の学級に在籍する多様な教育的ニーズのある子供の教科指導上の配慮に関する研究」、令和5〜7年度重点課題研究「多様な教育的ニーズのある子供の学びの場の充実に関する研究」、令和8〜9年度横断的研究「通常の学級を基盤とする重層的な指導・支援の在り方に関する研究」の研究代表を務める。
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